再発見、西武多摩湖線&山口線

市境から若干離れた話題になるが、西武多摩川線の兄貴分的な存在、西武多摩湖線と、接続する山口線の話。

所用で西武ドームへ行くことになった。乗換案内で意外なバス路線が出てくることを期待したが、最も順当な経路は国分寺から西武多摩湖線と山口線を乗り継ぐというものだった。
ちなみに次点は西武国分寺線で東村山、所沢、西所沢と乗り継ぐものだが、乗り換え回数の多さに辟易し、候補から外した。

多摩湖線に乗るのは初めてではないはずだが、国分寺駅の乗り換え改札を抜け、左前方へしばらく歩いていくと、もう見覚えのない風景になる。広い通路を歩ききったところに現れたプラットホームは、いかにも私鉄の支線の始発駅といった表情を湛えていた。
電車は出たばかりで10分近く待つことになったが、ホームからは西武バスの専用道と折り返し場、そして小さなバスターミナルが見えるので、乗り物好きなら飽きることがない。専用道はバス1台分の幅しかないが一方通行ではなく、何らかの方法で正面衝突を避けているのだろう。

ようやく電車が到着。運転台の真後ろに2人がけのシートがあったので座った。
少年時代には電車に乗ると座席が空いていても立って運転席を覗き込んでいたものだが、最近は真っ先に座って休むことしか考えない。そんな私だが、この席なら中腰になると前が見えることを発見し、時々腰を浮かせて運転席を覗き込むことにした。

国分寺を出ると次は一橋学園。単線の線路が真っ直ぐ延びるだけの駅間だが、信号機が次々と現れる。列車の分割がない限り、この駅間には1編成しか入れないはずで、いくら信号機を設けたところで列車間隔を詰めることはできない。
何かがおかしい、と思い信号機の柱を見ると「出発」の文字。何だと! この、ポイントもない一直線の線路上に停車場があるというのか!

ちょっとした発見に興奮しながらも席に戻り、萩山着。また腰を浮かせて前を見てみると、拝島線と平面交差していることが分かる。
下りは多摩湖線と拝島線が同一ホームで乗り換え可能、上りは多摩湖線と拝島線が1本の線路を共用しているようで、列車本数が限られているからこその構造だとは思うが、なかなか便利だなと感心する。

萩山を出ると、多摩湖線はしばらく複線っぽい線形となる。ただ萩山駅の外れで2組の線路は1組に集約され、単線に戻った途端に次の八坂駅がある。
あとはずっと単線で終点まで行くのだろうと高をくくって席に戻ったが、ふと立ち上がって前を見ると、いつの間にか複線になっている! 多摩湖線にも複線区間があったのか、と意外な発見に驚きつつ席に戻ったのだが、武蔵大和駅に着く直前に再度確認すると、もう単線に戻っていた。一体、多摩湖線の配線はどうなっているのだ??

この辺で謎を抱えきれなくなり、Wikipediaを開いた。
いきなり「全線単線」と書いてあって一瞬戸惑うが、その理由はすぐに分かった。八坂~武蔵大和間に回田信号場というのがあり、さっき見た複線区間は、この回田信号場の構内だったのだ。行き違いのために設けた信号場が延々1kmぐらい続いていたわけだ。実質的には複線だが、名目上は単線ということになる。
また、国分寺を出てすぐのところに本町信号場というのがあることも確認した。ただ、こちらは行き違いのできない一本道。折り返しは可能だろうが、国分寺まで行かずに折り返すというニーズはあまりなさそうで、存在意義は依然として謎だ。

そうこうしていると武蔵大和を出て、線路の両側がにわかに切り立ってくる。しばらく前、線路脇の崖が崩れて半月ぐらい不通になっていた区間だ。対策工事はまだ続いているようで、ブルーシートが生々しい。

終点の西武遊園地駅でも何やら崖崩れの復旧工事のようなことをやっていた。

そんなこんなで、単調かと思っていた多摩湖線の旅は実に変化に富み、飽きることがなかった。

終点で待っているのは新交通システムの山口線。こちらは運転台直後に前向きのクロスシートがあり(ただし大人にはすこぶる狭い)、それ自体が遊園地の乗り物のようでもあるが、信号機やATS地上子などの設備は普通鉄道そのままで、こちらも乗っていて楽しい。

大満足で西武球場前駅に到着。大邸宅の前庭のような、こざっぱりとした雰囲気がいい。

所用はすぐ済み、同じルートで帰宅することにしたが、西武山口線はまさかの30分間隔。普段は20分間隔程度で走っているので、運が悪かったようだ。時刻表の下部に「基」という文字があるので、今日は基本ダイヤだが、行楽シーズンやイベント開催日には増発され、時刻表を差し替えるのだろう。

だだっ広い構内を見ながらひとしきり待ち、小さなクロスシートに収まって西武球場前を後にした。

中央線生活に飽き飽きした方、東小金井から2駅足を延ばすだけでこんな世界が広がっていることを知ってほしい。

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