市境住民の貴重な交通手段である、小金井市のコミュニティバス「CoCoバス」。
私は自転車ユーザなので常用こそしていないものの、雨が降った際など、東小金井駅と自宅の往復に利用することがある。
そのCoCoバス、しばらく前に「中町循環との接続のため、東町循環の発車時刻変更」という意欲的なダイヤ改正を行ったが、実はさらなる再編計画が進行中だった。
小金井市コミュニティバス再編事業
https://www.city.koganei.lg.jp/kurashi/482/buss/cocobussaihenjigyo.html
武蔵野市のムーバスもそうだが、税金で走らせているだけに「これでよいのか」というチェックがきちんと働いており、再検討の議論の過程が透明になっている。
少なくとも後者は、一般の路線バスにはなかなかないことだと思われ、実に興味深い。「その筋の人」はこのページだけで酒が飲める。
私は東町循環しか興味がないのでそこだけ読んだのだが、当たり前と思っていたCoCoバス東町循環にもいろいろと問題があり、ルートの再編といっても一筋縄ではいかないことが分かった。
主な問題点としては以下のとおりである。
- コミュニティバスなのに市役所に直結していない
- 小金井・三鷹市境の南北道路沿い住民から騒音・振動の苦情がある
- 連雀通りより南側が不便なまま
まず1点目。確かに「市の全域から市役所へ行きやすくする」ということには一定の意味があると思うし、三鷹市の「みたかシティバス」も数年前の路線再編で「市役所志向」が高まったように思う。
市役所自体には年に1回程度しか行かないだろうが、市役所付近には市の施設が集まっているから、それら全てを含めるとそれなりのニーズになるだろうということか。
次いで2点目。住民から苦情が上がっていたとは初耳だが、現地を頻繁に通るので事情は分かる。騒音や振動は通り沿いに住んでいないので体感できないが、道幅は限界といってよい。
まず富士見通りを右折するところがギリギリで、最も狭いところの余裕は数十cmしかない。
その後の直線区間もバスと自転車がすれ違うことが難しい状況で、私は向こうからバスが来ると電柱の陰で待避するようにしている。
バスマニア的には「狭隘路線」として楽しめる面もあるが、毎日そこに住んでいる人からすれば何とかしろよという話だ。
そして3点目。連雀通りより南側も小金井市東町なのだが、確かに公共交通は何もない。少なくとも連雀通りまで出ないとバス停はなく、野川に近い場所だと結構不便そうだ。
以上3点の課題を背負いつつ、使用できるリソースは現有の車両のみ、すなわち「中町循環」と「東町循環」でポンチョが各1台、計2台だけという制約の下、路線をどのように再編していくのか、ということを真面目に議論している。
結論はまだ出ていないが、各課題に対する検討状況は分かった。
まず、東町循環が市役所に直結していない問題だが、東町・中町の2路線を統合するか否かが決まらない。
おそらく、東町循環と中町循環を統合して1路線とするのが当初の目論見だったと思うが、1周40分以上の大きなループになるため、行きもしくは帰りが遠回りになってしまう例が多発する。たとえば「農工大通り東」から乗車して中央線の駅へ行く場合、これまでも若干の迂回で東小金井駅へ行っていたが、路線統合後は今以上に迂回したあげく、武蔵小金井駅へ連れていかれるのである。
OD表も資料に載っているのだが、やはり需要の多くは中央線の駅へ向かっている。現状どおり「中町」「東町」の2路線に分割し、市役所方面へは乗継で対応するのがよいように思う。また、市役所新庁舎へはCoCoバス各路線が直接乗り入れるのではなく、武蔵小金井駅からのシャトルバスで対応する(CoCoバスは武蔵小金井駅に乗り入れればよしとする)という提案も出ている。この前提だと、結論がまた少し変わってくるだろう。
次に騒音・振動問題だが、富士見通りから南下する場合、現在のルート以外にポンチョの通れる道がないのだそうだ。
代替案についてはかなり広範に検討されていて、富士見通りから天文台通り経由で連雀通りに出る(武蔵野・三鷹市域を1km以上通過する)、そもそも富士見通りを通らない等の案も出ている。
しかし前者については、武蔵野市が「ムーバス(境南西循環)と重複するから難しい」と意見を寄せていた上(何が難しいんだろうな;両系統のバスが輻輳した場合の安全性?経済的な話?)、富士見通り自体、「石原ストアー」や「やきとり 森」のあたりで幅員が足りていないとのこと。毎日19時台にCoCoバスの回送車がこのルートを走行しているのだが、営業運転でないから許すということか。
また後者については、今まであったバスがなくなる「空白エリア」が大きい上、富士見通りを通らないと東小金井駅の南口にアクセスできない(南口商店街から富士見通りへのスルーはできるが、南口商店街方面への折り返しができない)ため、必然的に北口発着になるという。京王バス境82系統が北口発着で開業したのは仕方ないなと思ったが、CoCoバスも遠回りの北口発着になってしまう可能性が出てきた。
そして連雀通りより南側エリアの運行については、道幅が狭いのでポンチョは不可とのこと。
西武線より東側エリアは一応可能なのだが、連雀通りの踏切のところで武蔵小金井方向への行き来が難しい(曲がる際に踏切上で対向車線にはみ出す)ため、武蔵境方面への行き来しかできず、小金井市のコミュニティバスとしては路線設定が困難だという。
2点目・3点目については打つ手なしのようにも思えるが、ここでウルトラC、「ポンチョをやめてCoCoバスミニ(=ハイエース)にする」という案も出ている。これなら騒音・振動は軽減される上、連雀通りより南側についても運行が可能となる。
市境住民としてはワクワクする展開だが、新規に車両を調達する予算、運行事業者の余力(ハイエースのほうは「つくば観光交通」というタクシー会社が請け負っている)などの課題がある。そして何より、現状30分に1本のポンチョでも座れないことがしばしばあるのに、輸送力が足りるのか?というのが疑問だ。
その他、現状路線について、東小金井南口商店街から「狭い商店街をポンチョが走るのは危ないからやめてもらいたい」といった意見も出ているそうで、この意見が通ると東小金井駅南口発着は厳しいと思われる。どのような結論になるのか全く予断を許さない。
さらに、運賃についての資料もあった。現行は100円均一だが、予想どおり東町循環は赤字で、収支率50%程度(鉄道でいう「営業係数」だと200程度)。ハイエースの路線を除けば最も収支率の悪い路線であるようだ。
試算によれば、運賃を180円とすると東町循環の収支率は7割程度に上昇し、CoCoバス全体としては黒字化するとのこと。
値上げする場合、小児半額、障害者半額等の各種割引についても検討するようで、これから意見集約をするようだ。目が離せない。
今、確かなのは「現状のCoCoバスの姿は、そう長くない可能性が高い」ということだ。
当たり前の存在と思わず、実際に乗って、今の姿をしっかり記憶しておきたいと思う。